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「鶏白湯ちゃあしゅう麺(醤油)」@麺や しみずの写真宇都宮の街はいつものように静かだった。冬の陽射しが、灰色のコンクリートの道に淡く落ち、僕の影を長く引きずっていた。
2026年の1月17日、春を思わせる温かい日に僕はここにいた。インターパークの喧騒から少し離れた場所、その店はひっそりと佇んでいた。

「麺や しみず」

看板の文字が、風に揺れるように優しく僕を迎えた。店主のオヤジさんは、カウンターの向こうで黙々と調理をしていた。白髪交じりの頭、穏やかな目。僕が入ると、威勢のいい高い声で「いらっしゃい」と大きく言った。これは期待ができる。

店内はさほど広くはないが、木のテーブルがいくつか並び、壁には古いポスターが貼られていた。メニューはシンプルだ。鶏白湯とあっさり魚介、つけ麺、餃子。
僕は鶏白湯ちゃあしゅう麺の醤油を注文した。1400円。追加で麺大盛りを100円、魚粉を120円。合計で1620円。安くないが、僕のようなアラフォーの男にとっては、時折の贅沢だ。

待っている間、僕は窓辺の席に座り、外の景色を眺めた。通り過ぎる車、遠くの工場らしき煙突。宇都宮は餃子の街として知られているが、僕にとってはラーメンの街でもある。子供の頃、父と食べたラーメンの記憶がよみがえる。あの頃のスープは、もっと薄くて、化学調味料の味が強かった。でも今は違う。僕たちは、もっと本物の味を求めている。しみずさんは2010年にリニューアルしたそうだ。元は「萬福厨房 清水苑」という名前。メニューを一新し、鶏白湯をメインに据えた。

やがて、ラーメンが運ばれてきた。白い丼に、黄金色のスープが満ち、表面に細かな泡が浮かんでいる。
チャーシューは4枚、豚バラの厚切りで、1cmはありそうだ。表面を炙った焦げ目が、香ばしく輝いている。
ネギの緑が鮮やかで、ピンクのナルトが可愛らしく浮かび、魚粉が茶色い粉末のように散らされている。
スプーンでスープを掬うと、鶏の香りがふわりと立ち上った。那須鶏を使っているそうで、確かに濃厚だ。鶏の骨から抽出した出汁が、醤油の塩味と溶け合い、まるで古いワインのように深みがある。

僕は箸を手に取り、麺をすくい上げた。中太の麺、低加水で作られた自家製。噛むと、弾力があり、小麦の香りが口いっぱいに広がる。大盛りにしたのは正解だった。量が多く、食べ応えがある。北海道産小麦を数種ブレンドしたという低加水麺は確かにコシが強く美味い。

そしてスープ。
一口目を啜った瞬間、僕は時間を忘れた。クリーミーで、鶏の甘みがじんわりと染み渡る。
魚粉の追加が、いいアクセントだ。カツオや煮干しの風味が、鶏白湯のまろやかさを引き立て、まるで海と山の出会いのように調和している。濃厚なのに、重たくない。

チャーシューに箸を入れる。厚い豚バラ、炙りの香りが鼻をくすぐる。噛むと、脂が溶け出し、肉の繊維がほぐれる。美味しい。だが、4枚は多かった。アラフォーの胃には、少々負担だ。2枚目で満足し、3枚目で後悔がちらり。4枚目を食べ終える頃、胃が重く感じた。笑
国産豚バラを使うこだわりも好感が持てる。炙りが、香ばしさを加え、脂の甘みを引き出している。

食べ進めながら、僕は店主のオヤジさんを観察した。厨房は1人で切り盛りしているようだ。それを奥様が支える名コンビだ。
お客さんが入るたび、丁寧に声をかけ、注文を聞く。あの接客は、気持ちがいい。こうした小さな気遣いが、店を温かくする。
店内は混み合っていた。家族連れ、仕事中の職人さん。皆が黙々とラーメンを食べている。確かに人気店だ。

スープを半分飲んだところで、僕は過去を思い出した。20代の頃、東京で食べたラーメン。あの頃は、毎晩のようにジャズバーに通い、ビールを飲みながら人生を語っていた。村上春樹の本を読み、孤独を愛していた。今は違う。家族がいて、仕事があって、宇都宮のような地方都市で暮らしている。でも、このラーメンは、あの頃の自由を思い出させる。魚粉の風味が、潮風のように懐かしい。麺をすする音が、雨の音のように心地よい。店内にはラジオが小さく流れていて、クラシック音楽がかかっていた。ベートーヴェンのソナタか。いや、もっと軽やかなもの。いずれにせよ、音楽とラーメンは、僕の人生の伴侶だ。僕の体験も同じだ。鶏の出汁が、体を温める。

チャーシューの脂が胃に溜まる頃、僕はスープの底を探った。底に沈んだ鶏の粒子が、舌に絡まる。濃厚な鶏出汁、醤油のコク、魚粉の旨味。すべてがバランスよく融合している。
全てを食べ終えて、僕は息を吐いた。満足感と、軽い胃もたれ。

オヤジさんにお礼を告げて外に出ると、複数の家族連れが行列を作っていた。なるほど家族サービスにも最適な名店だ。次は妻と来よう。

宇都宮の空は、淡い青。僕は車に乗り、エンジンをかけた。ラーメンの余韻が、胃に残る。鶏白湯の香りが、服に染みついている。

次に来る時は、つけ麺を試そうか。太麺が、濃厚なスープに絡む様子を想像する。あるいは、塩味の鶏白湯。選択肢は多い。人生もそうだ。僕たちは、いつも選択を繰り返す。でも、この店のように、シンプルで本物のものが、最後に残る。
道中、僕は猫を見かけた。路地の隅で、のんびり毛づくろい。自由だ。僕も、そんな自由を求めて、この店に来たのかもしれない。

帰宅後、僕はコーヒーを淹れた。濃いめに入れたブラックコーヒーの苦味が、ラーメンの余韻を中和する。
そして今日の体験をレビューに書く。鶏白湯ちゃあしゅう麺、醤油味。魚粉のアクセント、チャーシューのボリューム。店主の笑顔。すべてが、記憶のピースだ。このレビューを書いている今、僕はまたあの味を思い浮かべる。宇都宮の隠れた名店、「麺や しみず」。それは、ただのラーメン屋ではなく、人生の味を教えてくれる場所だ。もしあなたが、宇都宮を通るなら、寄ってみてほしい。きっと、引き込まれるはずだ。

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